現代のヴァイオリンを一般にコンテンポラリー・ヴァイオリン(または新作)と呼びますが、ここでは戦後(1945年-)生まれまたは存命中の製作者(またはメーカー)によるヴァイオリン(およびヴィオラ、チェロ)作品をコンテンポラリー・ヴァイオリンと考えます。なおコマーシャル・ヴァイオリンとは区別し、個人の製作者のみについて述べます。
現代のヴァイオリン製作は、オールド※〜モダン※時代と同様に師弟関係によって技法が受け継がれているほか、ヴァイオリン製作学校で基礎を学ぶことも一般的になりました。現在活躍するマスター・メーカー※達を輩出したヴァイオリン製作学校として特に重要なのは、ドイツ・ミッテンヴァルトの製作学校(Mittenwald)とイタリア・クレモナの製作学校(Cremona)です。
ページの先頭に戻るミッテンヴァルト・ヴァイオリン製作職業専門学校(1858年設立, Berufsfachschule für Geigenbau Mittenwald)からは、製作のみならず、修理や教育の分野にも多くの人材が輩出されました。アメリカのシカゴおよびソルトレイクシティにある製作学校は、いずれもミッテンヴァルトの流れを汲むものですし、日本人で初めてドイツのマイスター資格を取得し、多くの弟子を育てた無量塔藏六氏もここの出身です。余談ですが、この学校出身のヴァイオリン・ディーラも少なくはなく、イギリスやオランダなど各国で活躍しています。同校は現在、バイエルン州立ミッテンヴァルト楽器製作職業専門学校(Staatliche Berufsfachschule für Musikinstrumentenbau Mittenwald)の一部です。
ページの先頭に戻るクレモナ国際ヴァイオリン製作学校(1938年設立, Scuola Internazionale di Liuteria Cremona)ではピエトロ・ズガラボット(Pietro Sgarabotto, 1903-1990)、ジュゼッペ・オルナーティ(Giuseppe Ornati, 1887-1965)、フェルディナンド・ガリンベルティ(Ferdinando Garimberti, 1894-1982)など、現在では後期モダン・イタリアンとして高い評価を受けるマスター・メーカー達が教鞭を執ってきた歴史があります。その意味でモダン時代のミラノ・スクール※を現代に受け継ぐ流れであるとも言えます。コンテンポラリーの代表的なマスター・メーカーであるフランチェスコ・ビソロッティ(Francesco Bisolotti, 1929-)やジョ・バッタ・モラッシ(Gio Batta Morassi, 1934-)などもこの学校の出身です。同校は現在、イタリアの国立の国際弦楽器木工製作専門学校(I.P.A.L.L., Istituto Professionale Internazionale per l'Artigianato Liutario e del Legno)の一部です。
ページの先頭に戻る現代では、情報や流通の障壁がなくなるとともに、製作者の国籍や製作地による優劣はもはや完全になくなったと言えるでしょう。それによって価値判断はより難しくなっています。過大評価されている製作者はいずれ淘汰され、過小評価されている製作者は遠からず正当な評価に収斂するでしょう。その中で一過性の流行などに左右されず、普遍的な価値を備えたヴァイオリンを見極めるには、オールド〜モダンに精通したエキスパート※の知見を活用されることを是非おすすめします。
ページの先頭に戻るコンテンポラリー・ヴァイオリンの販売価格相場は2018年現在マスター・ヴァイオリン※で60〜300万円前後、工房作品※は30〜90万円前後、それ以外のものは〜60万円前後が一応の目安です。
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